V・S・ラマチャンドラン「脳のなかの幽霊、ふたたび」

V・S・ラマチャンドラン「脳のなかの幽霊」 - モナドの方への続編ということで、パート2かと思いきやパート1.5的な内容になっている。
講演をもとにしているので口語体で読みやすく、またコンパクトにまとまっているので、前作「脳のなかの幽霊」の復習にはもってこいだ。(読みやすいので一見、浅薄にも見えるが、後ろにガッツリとした注がついている。そちらを平行して読み進めれば、かなり読み応えはある。)
逆に、予習として読むには注意が必要だ。なんせ前作「脳のなかの幽霊」で、ラマチャンドラン探偵がじわじわ調査してゆくミステリが、あっさりとネタバレされているからである。前作を読むつもりなら、後回しにしたほうがベターだろう。

本書は1.5的な内容だと述べたが、「脳のなかの幽霊」ではハッキリわかっていなかったことが実験によって確かめられていたり、ラマチャンドラン自身の仮説も進化していたり、確かな歩みが感じられる。また文字を見ると色を感じると言った共感覚や、アートの普遍的法則などを新たに詳しく取り上げている。
脳科学的に見るアートの問題は非常に面白い。3章の冒頭でアートの普遍法則として10則を挙げており、各々について簡単な説明がなされている。この詳細については近刊の「アートフル・ブレイン」で出版される予定だそうだ。未来の書物も要チェック。

また最終章はクオリア問題を論じている。ここでメタ表象ホムンクルスという概念が出てくるのだが、茂木健一郎が提唱しているメタ認知ホムンクルスに似ている。(茂木健一郎の方が定義がしっかりしていて、ラマチャンドランはそれほど紙面をさいていないけども)
アートの問題といい、クオリア問題でホムンクルスというタブーに触れる所といい、脳の最前線にいる二人が、同じ傾向で人間意識問題と向かい合っているのは偶然なんだろうか?

専門的に見れば全然違うなんてオチがあったりして。ただ傾向は似ていると思う。

余談

美の巨人たち - モナドの方へで、ラマチャンドランなんていう名字だったらステキだな、と書いたのだが、実はラマチャンドランは名字じゃないようだ。
本名はヴィラヤヌール・S・ラマチャンドラン。両親がヴィラヤヌール・スブラマニアンとヴィラヤヌール・ミーナクシであり、兄がV・S・ラヴィとある。どうやらヴィラヤヌールが名字らしい。
でもラマチャンドランって言う*1でんすよね。なんでだろう。

追記

本書でダミアン・ハーストというアーティストを知った。ラマチャンドランのお気に入りなのだろうか。

鮫、羊、牛、豚などをホルマリン漬けにするというオブジェを作っているようだ。ただ衝撃的というだけでなく、単純に美しい。

鮫とか

http://www.artchive.com/artchive/H/hirst.html
すごいよ。

『ホルマリン漬け』にされた……「輪切り」のソルベだった!

http://dh.ryoshuu.com/art/1996someco.html
駕籠真太郎の輪切りものの原点はこれなのかな。
ザ・セルでもパクられてましたね。

ザ・セル
ザ・セル
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*1:帯にあるように、養老先生までも!