高山宏「ゴシックな身体――“Body Criticism”に抗って」
横浜美術展で行われたGOTH展、その特別ゲストということで高山宏の講演が行われた。個人的には展示よりもこちらがメイン。以下、要項。
- ミュージアムってなに?日本語だと博物館、美術館、図書館……となってしまう。
- 今回の展示のようなグロテスクなものばかり集めた、ダイム・ミュージアム、ペニー・アーケード。
- 日本のスペクタクル研究、視覚文化論はまだまだ。
- concept/conceptionの分化が18世紀におこる。男は頭で妊娠、女は身体で妊娠。
- 1752年のブリティッシュ・ミュージアム法によってパブリックミュージアムが誕生した。それらは、もともとブンダカンマーとよばれる妖異博物館だった。
- これらを表現する言葉として適切なのは、wonderfulやstrange。
- strangeの意味は奇妙なとか不思議なとかじゃなくて、これまでと違う違和感、相対的な異化作用を表す言葉。
- 近代は視ることの快楽を追い求めてきた。特にイギリス人の執着は異常。
- 束芋の作品なんかはまさにファンタスマゴリア、そしてこの作品の指のうごめきがマニエリスムを思わせる。
- ゴスロリな人たちの部屋はまさにブンダカンマー。現在の状況はゴシック小説が生まれた状況とは全然違う、むしろマニエリスムだ。
- 視ることの快楽の例証として、デモンストレーター、ピクチャレスク、サブライム。
- ゴシック小説とつなげるならホフマンの砂男。そのフロイトによる分析「無気味なもの」。肉体をめぐる異化。
- 今回のGOTH展はミュージアムと何かを考えさせる、メタミュージアムである。
- ボディ・クリティシズムにおける観相学=外見と精神の対応から抗ってゆくマニエリスム、ゴシック。現代のゴスカルチャーもその延長線上にある?
とまあこんな感じで、英語の語源を辿っていって異なるもの同志を結びつけるという高山学が炸裂。最初は黒ずくめのスタイルにみなさんビビっていた感じだったけど、最後はとても盛り上がった。また個人的にも気に入っていた束芋の作品が話のキーに使われていて、あれをマニエリスムとつなげるあたりは流石だなと感じた。
最後に質問までしてしまって、おかげでボディ・クリティシズムと巧く繋がって良かったと思う。
あとボディ・クリティシズムが売れてないそうなんで、買ってあげてください。
ボディ・クリティシズム―啓蒙時代のアートと医学における見えざるもののイメージ化posted with amazlet on 08.01.31