高山宏「超人 高山宏のつくりかた」

学魔降臨。帯にある言葉通り、高山宏の学魔ぶりを存分に味わえる一冊。
これまでの高山本とは違って、過去の足跡を辿ったり、プライベートを省みながら、その広大な高山学こと人文科学の世界を愉しく遊弋することができる。

プライベートが披瀝されているところからして、どこからつっこんで良いのか分からなくなるぐらい、ツッコミどころは満載。他の本や、後書きなどから、色々な噂は知ってはいたけど、次々と繰り広げられる高山伝説に、唖然とするだろう。(二人きりで話して落とせない女はいないとか、宗教の勧誘をやっていたとか……)

そういう赤裸々な読み方がある一方、これまでの総括的な意味で学問を振り返り、読書案内としてしまっているところは、さすがは同門の四方田犬彦「先生とわたし」 - モナドの方へにも似ている。
こうして一覧で俯瞰することによって、その学問領域の拡がりに改めて感心してしまった。これを足がかりに、再び高山本、あるいはそこから派生する本へと戻っていきたい欲望がどんどん湧いてくる。

知の世界はいつの頃からか、実利的な合理性の渦に呑まれるように祝祭的な高揚感が消えてしまっている。いまは少数の司祭達がその旗振りをするばかりになっている状況だ。
人間の持つ本源的な知恵、それを追求する幸福にはまったくコミットしない実学主義が横行する中において、ますます面白くなってゆく人文科学へと麻薬的に浸ってゆくありかたもあっていいはずだ。小難しく腕組みをして唸ってばかりいるよりは、悪魔的に淫して。

余談

このNTT出版のライブラリーレゾナントは結構面白そうな本が多いんだけど、選書としてはちょっと高いのが難点。