ジョン・バース「旅路の果て」

――ある意味で、ぼく、ジェイコブ・ホーナーだ。
こんな痺れる一節で始まる、アメリカ・ポストモダン文学の名作。文体の格好良さは訳者によるところも大きいのかもしれないが、やはりポストモダンらしいひねくれた鋭さを持っている。

内容は個人的にそんなに好きになれるようなストーリーではなかったが、ところどころにちりばめられた妙に小難しいテクニカルタームや、逆に平易な文なのに妙にカッコイイ文体に、思わず引き込まれた。ストーリー的な意味では、終盤の中絶のシーンが恐ろしいの一言。切迫した感じが、ホラー小説では逆に味わえないリアルさで、これは苦手な人もいるだろう。

そして最後の一節はたった一言なのだが、「旅路の果て」というタイトルにふさわしい。その文体に痺れる感じを味わうためにも、自らの目で確認していただきたい。

余談

他の白水uブックスに比べると、本書だけ異常にマージンが少なくて読みづらい。そんなにページ数を増やしたくなかったんですかねえ。