フランク・ダラボン「ミスト」

方々の噂に乗せられて見て参りました。いやあ、酷い映画だった。良い意味で。

どこからがネタバレになるのかわからないが、思いつくままに書いてみたい。
この映画は、濃霧の中に何かがいる!という未知なるものへの恐怖と、人間の心の中に潜む不気味なるものの恐怖、そのふたつによってどうしようもなくなる様を描いた作品である。序盤こそ、前者のコズミック・ホラーでショックを与え続けるものの、心身ともに疲弊してゆくつれて後者の恐怖が増大してゆくというところがミソだ。それが原作とは異なるエンディングにも直結してゆく。
これは確実に、キリスト教的の現代的問題(たとえば原理主義が政権を支えていたアメリカなど)と、古典的な選択と自由という問題を投影している。人間が切羽詰まったときにいかにすればよいか、そして運命にあらがえぬままどう変容してゆくのか。西洋人による究極の選択が、そこにある。

霧の中から現れるモンスターたちよりも、恐ろしいモノ……
どうしようもない絶望は異世界からやってくるのではなく、人間の心の奥底から這い出してくるということなのだろう。


原作は、この短編集に載っている。未読ですが。

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