スチュアート・スィージィー「デス・パフォーマンス」

hugo_sbさんの紹介で知った本。自らの身体を使った性倒錯をテーマにした本である。
原題はAmok Journal。Amokという言葉が実にきな臭い。

1章は自慰死。窒息など生命を危険に晒す行為にに性的な興奮を覚える人間が、ついには死に至ってしまった例をとりあげている。どうやらクビシメというのは古くから性的な遊戯として楽しまれていたようだ。たしか阿部謹也「中世の窓から」 - モナドの方へにも「くびしめ遊び」という子供の遊びが紹介されていたはずである。また窒息に興ずるのがほとんど男であるということも興味深い。
2章は頭蓋貫通。精神を神秘的世界へと解放させるために頭蓋に穴を開ける行為について、冷静なレポートがなされている。今だとマンガのホムンクルスのテーマになっていると言った方がわかりが良いだろう。当然ながら科学的根拠はない。
3章は自己去勢と四肢切断愛好。自分の肉体を改造せずにはいられないという衝動が語られる。ボディイメージと現実の身体との違いが、それを性的欲望にまで高める。ラマチャンドランが研究しているような幻肢の問題ともつながりがあるだろう。
4章はサイキ・アウト。異常な性的欲望や、幻覚などの症例が載っている。

当然のことながら身体の問題がメインなので、とかく痛い描写が多い。特に後半は過激になってゆくので、思わず声をあげながら読んでしまったほどだ。
しかしながら、この異様な世界を通じて、人間の脳と体のつながりという不思議さに、ある種の感動すら覚えたのだった。

デス・パフォーマンス―倒錯と死のアモク・ジャーナル
スチュアート・スィージィー Stuart Swezey 大塚一軌
第三書館 (2000/07)
ISBN:4807400096