ユルギス・バルトルシャイティス「異形のロマネスク」

本書はバルトルシャイティスパリ大学での博士論文を元に書かれている。
ロマネスク美術における彫刻に見られる異様に変形した図像の謎に迫る論。結論から言ってしまえば、図像が枠組みによって変形され、変形された図像が再び形体を産み出し図像が再生産されてゆくという流れ。丁度、モーフィングCGのように図像が変形していると分析してゆくのだが、その例証としてあげてくるバルトルシャイティス直筆の図が恐ろしく膨大なのである。

これだけの図像をかき集めてきて、「これとこれは、こういう風に見ると似てるでしょ?」と言われるとぐうの音もでない。ばっさばっさと図像変形を解読してゆくだけに、面白く読み進められた。

『幻想の中世』の中に、上半身だけの怪物の図像がなぜ作られたのか?という謎解きにおいて、それは下半身が摩耗した図像が誤って伝播したからという面白い切り口の論が出てくるが、本書はそういったバルトルシャイティス節のまさに原点と言えるだろう。