2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

倉坂鬼一郎「騙し絵の館」

眩暈を引き起こす幻想的なミステリ、というより、本書は眩暈そのものである。果たしてどれが実際に起こったことなのか、それとも虚構の出来事なのか、はたまた妄想によるものなのか……ミステリ読みならばこのへんをキッチリ分別して読み取らないといけないの…

ヴィクトル・ペレーヴィン「眠れ」

ヴィクトル・ペレーヴィン「恐怖の兜」 - モナドの方へがあまりに面白かったので、とりあえず全部読むぜという勢いで読み始めたペレーヴィン。本書は短編集「青い火影」から、その半分ほどを訳出した短編集になっている。 本書はロシア国内で発売されてから…

ギャラリーTOM「澁澤龍彦の驚異の部屋」

本当は「秘密結社鷹の爪団 THE MOVIE」を見る予定だったんだけど、たまたま当日に巖谷國士のレクチャーをやるということを知ったのでギャラリーTOMへ。 こちらは「驚異の部屋」というコンセプトで、直接、澁澤龍彦に関係しているものだけでなく、間接的に影…

埼玉県立近代美術館「澁澤龍彦―幻想美術館―」

ひたすら澁澤龍彦の趣味に基づいた作品を並べた文字通りの幻想美術館。 よくぞここまで揃えたと感心させられるラインナップに、ただただ感服するばかりである。本物どころか印刷物でさえ見ることが難しい作品が揃っているので、これはもう必見というしかない…

黒沢清「映像のカリスマ」

本書は映画史と銘打ち、映画の話題に終始しているが、それでもなお映画の本ではないと言いたい。 ここには映画というものに対する黒沢清の真摯な姿勢と、物作りに関わる本質が詰まっている。自分がそれほど映画に詳しくないのと、世代の違いもあって本書で言…

トーマス・シュタウダー「ウンベルト・エコとの対話」

冒頭に著者による「薔薇の名前」の評論があるが、他はすべてエーコとの対談になっている。エーコの人生について対談しているもの以外は、すべて小説を題材にしていて「薔薇の名前」「フーコーの振り子」「前日島」、そして未訳の小説である「パウドリーノ」…

フレッド・ホイル チャンドラ・ウィクラマシンゲ「宇宙からの生命」

フレッド・ホイルにといえば宇宙は変化しないという定常宇宙論の発案者である。そして主流の宇宙論であるビッグバンという言葉を意図せずに発明してしまった人でもある。 →定常宇宙論 - Wikipedia またジョジョ第6部でフー・ファイターズがその説を引用する…

「騙し絵の館」

あまりにも面白そうだったんで買ってしまった。 というか、なにげにタスクが溜まっている。マリみて新刊だの…… 騙し絵の館posted with amazlet on 07.04.12倉阪鬼一郎 東京創元社 (2007/03)売り上げランキング: 51885Amazon.co.jp で詳細を見る

ペトロニウス「サテュリコン」

放埒な古代ローマの世界へようこそ。 「色」欲と「食」欲、そして知「識」が同一空間で展開される作品。2000年前に、すでに人間の欲望がすべて描かれていたわけだ。 岩波文庫なのに、初っ端の一編からして児童ポルノ法にひっかかりそうな内容である。読み所…

ハーヴェイ・ジェイコブズ他「グラックの卵」

ユーモア・ナンセンスSFのアンソロジー。9篇を収録している。 SFもここまでやっちゃうと、もうSFじゃないんだけど、それでもSFと言っちゃえるところが懐が深いところだろう。 とりあえず気になった作品だけピックアップ。 ヘンリー・カットナー「ギ…

Ali Project「薔薇架刑」

「Rozen Maiden」とゲーム版「舞-HiME」の楽曲を収録したアルバム。 これまでシングルのみのリリースだったので、いちいちシングルなんか買ってられない!Amazonで送料とられちゃう!と嘆いていた人にはありがたいアルバムだ。当然、全部持っているぜ!とい…

池田敏春「ハサミ男」

殊能センセーのファンとしては見なければいけないとは思ってたんだけど、いまいち良い評判を聞かなかったのでずるずると先延ばしにしていた一本。見たら、案外、良かった。 原作を読んだのは発売当初なので細かいプロットの差異はわからなかったが大筋は同じ…

カール・ケレーニイ「神話と古代宗教」

原題は「ギリシャ人とローマ人の宗教」である。 哲学の実存という用語はもともと生(ビオス)ギリシャ語に由来している。 そもそも西洋思想がギリシャ哲学から始まっただけに、ギリシャ語源の用語があふれているが、そもそもの意味を理解している人は少ない…