2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

仁木英之「僕僕先生」

萌える抱朴子・列仙伝。 巽孝之の書評で興味を持って読んだところ、本当にかなりの萌え度だった。父親にパラサイトしていた22歳ニートの若者が、仙人に弟子入りして世界を旅するという内容なんだけど、この仙人というのが、白髭の老人なんかではなく、見た…

武田雅哉「新千年図像晩会」

和食や洋食もいいけど、たまには中華もいいもんです。 本書は中野美代子の弟子、武田雅哉による「蒼頡たちの宴」「桃源郷の機械学」の二次会的なノリの、地に足の着かない中華文化史である。 肩肘張らない洒脱な内容で、ためになる、感心するというよりただ…

道尾秀介「シャドウ」

作風としては道尾秀介「向日葵の咲かない夏」 - モナドの方へに近い。 子供を主人公にした無垢な視点の物語に、邪悪な気配が忍び寄ってくる奇妙な構成だ。 そもそも起きていることが、ただの不幸なのか、それとも誰かが作為的に起こしている事件なのかがハッ…

セイモア・フィッシャー「からだの意識」

最近、youtubeを見るのが忙しすぎて読書が怠り気味。相済みません。 スタフォードをどんどん読もうと思っていたんだけど、ボディ・クリティシズムがあまりにも濃すぎたため、ちょっと関連する本を押さえてから先へと進もうかという思い、「手ごたえ」の消え…

道尾秀介「骸の爪」

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」 - モナドの方へが中々に面白かったので、この作者のミステリを漁っている。どうやら作者と同名の主人公と探偵役は、未読である「背の眼」から引き継いだキャラクタらしく、前作とのつながりが微妙に示唆されている。他の書評…

野矢茂樹「他者の声 実在の声」

「論理哲学論考」の新訳をものし、ウィトゲンシュタイン研究で知られる作者の哲学的エッセイ。 テーマは言語、論理、無限などであるが、実際の所キーワードは最後の「無限」に尽きる。0.9999……が1と等しいことや、無限集合に関するカントールの対角線論法を…

イタロ・カルヴィーノ「遠ざかる家」

相続税に悩む主人公が、土地を売ってアパートを建てようとするのだが、次々と困難が降りかかってきて計画が遠のいてゆく、というだけの話。こう書くと三谷幸喜のコメディみたいだが、本書はもっと陰鬱で辛辣。人生の苦しみがにじみ出ている。 原題は「建築投…

ダナ・アーノルド「1冊でわかる美術史」

美術史の概観が知りたくて読んだんだけど、美術史の本と言うより「美術史」の本だった。 つまり美術の歴史について書いてあるというより、美術史とは一体何か?という本であるということ。 まあタイトルをよく考えればわかることではある。傑作とは何か?作…

エージェイ・アンジェエフスキ「とびはねて山を行く」

いつのまにやらあとで読むリストに入っていたもの。 現代ポーランドの作家で、先鋭的な作風で知られているらしい。しかし日本では、新しい世界の文学シリーズであるこの一冊を除いては翻訳されていないようだ。しかも本書も絶版である。ジョイスを初めとして…