飯田隆「クリプキ―ことばは意味をもてるか」

手軽に読めるわりに内容の詰まった哲学のエッセンスシリーズの中でも、どちらかというとマイナーな哲学者を扱った一冊。
クリプキのそれもウィトゲンシュタイン解釈にテーマをしぼり、言語や記号の意味についての面白い考察を紹介している。

あらゆる言葉は、それを発する人間にとっての私的言語である。それが一見厳密に定義されている数学的な記号であっても、それを理解しているということ自体を伝えることはできない。換言したり、多くの例を挙げて、そこに共通性がみられることによって、その人が自分と同一の理解しているということを知る。
換言は言語を言語で説明しているのだから、無限後退を起こす。
例を挙げるという帰納的方法は、数学的帰納法のように無限にあげつらうことができない以上は、有限の範囲でしか伝達を行えない。
こうして、あらゆる言葉は私的言語に過ぎなくなり、他者へ伝える機能としての意味を持てなくなってしまう……これがクリプキの立てた面白い問いだ。

この問題を初めて知ったのは、永井均ウィトゲンシュタイン入門』だった。こちちらもウィトゲンシュタイン入門としては良書なので、併せて読んでみるとよいかもしれない。