高山宏「かたち三昧」

東京大学出版会の雑誌『UP』に連載分「かたち三昧」に、漱石論を加えた、ページ数は少ないながらもエッセンスが詰まった高山学の見事なベスト盤。高山ファンは必読である。

全63回の「かたち三昧」はほとんど職人芸。1章2ページで、連想ゲームのように怒濤の如く展開される。前後の章は関係があるのだが、だんだんとずれていきめくるめく迷宮に突入する流れは、まさにセルペンティナータ。こんな芸当ができるのは高山宏だけだろう。
不思議の国のアリス』の「絵も会話もない本なんてナンになるの」という台詞通り、本の上1/3は図版になっていて、その注釈文も見事。味わい尽くしていただきたい。
また読書案内にもなっている。高山本ではおなじみの面子も多いけれども、新しい本も結構紹介されてて嬉しい。ホルスト・ブレーデカンプ『モナドの窓』読みたい!

後半の漱石論は、ほとんどトンデモすれすれのビックリさせられる内容。最終的に漱石とかどうでもよくなるくらいに知に淫することができる。漱石(というより漱石学者)をてんぱんにした師匠である由良君美の『メタフィクション脱構築』と比較して読むと面白いかも知れない。


いつになったらAmazonで扱うようになるんだろ……