マルセル・モース「贈与論」

レヴィ=ストロースの親族構造理論の霊感源となった古典的名著。
食料、財産、土地、労働、儀式、そして女子供までもが譲渡によって交換対象となりうる、未開社会の奇妙な経済活動を明らかにした本である。

隣の部族から何かを譲渡されたらば、それ以上のお返しをしなければならない。もしもできないときは、自分の家や田畑を焼き払い、もうお返しするものは何もないことを示さなければならない。全体的給付に対する償還義務を負う、そんな集団的で破壊的とすらいえるある種のコミュニケーション活動がある。
タオンガ、ポトラッチ、クラ交換、というフィールドワークの結果を踏まえながら、それらの現象を読み解いてゆく。
これらはまさにマネーが血液のごとく循環するように、巨大な環を描くように物々交換が行われる。クラとは環の意味である。そこでは単に者だけでなく、人や労働力までもが交換の対象となっている。
ここからわかることは、人類は根本的に交易する生き物であるということだ。

我々の社会は、マネーという共通した価値基準のもとに経済活動を営んでいる。
しかしインターネットの普及にともない、新たな物々交換の場が生まれた。また現金に似た作用はするが、換金できない電子マネーやポイントのようなものが数多くあり、これらの経済活動は急拡大しているにもかかわらず実態がつかめていない。
そして、そこでは贈与的な振る舞いが行われているように見える。twitterで起きていることや、ニコ動での創作活動、あるいはオープンソースですらも、これらの射程にはいっているのではないだろうか? 一度モースに立ち返って考えてみると面白いのではないだろうか?