ルネッサンス吉田「茜新地花屋散華」

一部で大人気のルネッサンス吉田の初単行本。
マンガの感想はあまり書くつもりはなかったのだが、本書に関しては一言いっておかないといけない感じがした。というのも端的に開高、埴谷という登場人物名からも明らかなように、その引用される哲学、文学の数々と、そこから生み出される硬質な思考が、いわゆるBL的(と片付けてしまってはいけないのかもしれないが)な物語と不思議な化学変化をおこしているからだ。
文学的という表現は、マンガにおいて必ずしも褒め言葉にはならないだろうが、本書においては登場人物の行動原理と一体となっており鬼気迫るものがある。それゆえに所々で現れるべっとりとした哲学的モノローグも、それを咀嚼することで得られるメッセージよりも、心のオノマトペの表現としてザクリとくるのである。

この世界では、愛と肉体と金がそれぞれコミュニケーションとして流通しているのだが、それらが一切交わらずに距離を置いているかと思いきや、突然に交差を始めたりする。
一読して連想したのはバタイユの思想である。呪われた部分が隠蔽されていることを執拗に語り、それを痛々しいまでに描き出してゆく。そんなどうしようもない苦しみの中にも、時折かいま見える底抜けの明るさが、まぶしい。

余談

千波龍英とか久しぶりに見たよ。(短歌が引用されていた)

余談2

開高、埴谷をもってくるあたり、結構いい歳なんじゃないかという気がするんだけれども……
あと名前に数字が頻発するあたりも気になるところ。