レッシング「ラオコオン」

wikipedia:ラオコオンとは、神官ラオコオンが蛇に襲われる様を描いたギリシャ彫刻である。ルドルフ・ハウスナーなどもその図像をコラージュ的に使っている。迫力とインパクトのある彫刻だ。

レッシングはラオコオン彫刻を中心に、絵画(この場合は彫刻だけど)と文学の関係性を探ってゆく。ラオコオンの元ネタはヴェルギリウスの詩であるわけなのだが、それから彫刻が作られ、作られた彫刻から再び詩が作られたりと境界を超えた影響関係の連鎖があった。
本書が書かれた当時はまだラオコオン彫刻の年代がはっきりしていなかったため、彫刻と詩を探偵の視点で読み解いてゆくことで、その前後関係を推理してゆく。ここが本書の面白いところだ。
絵画と文学の関係性はエクフラシスという言葉で論じらることがある。ホラティウスの「詩は絵の如く」を初めとして、古今東西、詩と絵は深い関係にあったのだけれども、それを丹念に分析している本というのは意外に少ない。そういう意味でも本書は貴重だ。
本書はずいぶんと古い論考ではあるけれども、レッシングの生き生きとした筆致と執念深い批評的「読み」が知的興奮をもたらしてくれる。

余談

本文の間に注釈がでてくるので異常に読みづらかった。しかも原注と訳注の両方が入り交じっていてカオスである。これだと、まず注を飛ばして読み、再び戻って注だけ読むという作業が必要になってしまう。少なくとも章の終わりとかにまとめて欲しいものだ。