マイケル・ブラムライン「器官切除」

グロテスクなほどに精密な医術描写が、ある種のアナロジーとなってストーリーを形づくる。奇抜でショッキングな短編集。
作家自身が外科医であるために特に手術の描写は精緻を極める。スプラッターものと誤解されてもおかしくないほどの壮絶さは、読み手を選ぶだろう。

個人的には、実験文学的な香りもする「ラットの脳」、外科手術によってアメリカを解剖してしまう「器官切除と変異体再生――症例報告」、ドラッグ的虚構が現実を浸食する「男の恩寵を捨てて」が興味深かった。やはり外科的に執拗な描写を容赦なく盛り込んでいるもののほうが、脂がのっている感じがする。

上記のような過激なものばかりではなく、わりと普通な短編や、意図がよくわからないものもあり。面白いのと、つまんないのと、よくわかんないのが1/3づつあるという、在りし日のアフターヌーンアフターヌーンを思わせる短編集だった。
手放しでは勧めにくいが、実験的な文体とスプラッター描写が許容できる人なら、一読の価値はあるだろう。