網野善彦「異形の王権」

文献だけでなく絵巻物などを結びつけて語る、異形の日本像。
ヴァールブルク以降、西洋でも起きた流れを導入し、図像学的な手法を一部取り入れているので、読んでいてとてもワクワクさせられた。

作者は文献の内容を絵に当てはめただけと謙遜しているが、その説得力はなかなかのもの。文献だけだと、小難しい古文がわらわらと出てきて「読めないよ!」と頭を抱えてしまう所なんだけど、絵を見せて「ほらここにこんな風に描かれてるでしょ!」と言われると一発で納得できる。

聖と賤、ハレとケ、その間に跋扈する「異形」。そんな不安定な動乱の時代に現れる異形のものたちを次々と描き出してゆく。教科書ではお目にかかれないような奇っ怪な存在や風習に、これまでの日本のイメージが崩れていった。
日本史に興味がない人でも、トリビア集として読むだけでも面白い一冊。

余談

タイトルに異形がつく本は結構あるのだが、「いけい」なのか「いぎょう」なのかぶれがある。図書館だとよみがな検索なので、探すときにとても迷う。どっちがスタンダードなんでしょうかね?