ヴィリエ・ド・リラダン「残酷物語」

未来のイヴ」でおなじみ?のリラダンの奇想と皮肉に満ちた短編集。
よんでいて気づいたのは(すぐに気づくべきだったのだが)ポオのスタイルによく似ているということだ。その影響はわざわざ指摘するまではないのだけれども、凝った文体といい奇妙なアイデアといい、ポオの短編にそっくりである。ただポオよりも文章にこだわりを感じた(文学っぽい?)のだが、これは翻訳のせいもあるかもしれない。

具体的なタイトルを上げてしまうとネタバレになってしまうので控えるが、フレドリック・ブラウンの短編と同じネタがあったりもする。リラダンの場合はアイデアをトリックとしてというより社会を皮肉るための装置として描いているので、面白さの方向性は随分異なっていると言えるだろう。
情景描写が長いのに話の展開が妙に速いので、じっくり味わって読むのが良い。短編を消化するというよりは、詩を読むようなスタイルで。