諸星大二郎「蜘蛛の糸は必ず切れる」

漫画家、諸星大二郎による短編小説集。以下の四編を収録している。

船を待つ

諸星大二郎が得意とするカフカ風の幻想小説。不可解な殺人などのミステリの味もあるが、むしろ目眩がするような不条理な雰囲気が漂う。もっとも諸星風であるがゆえに、むしろマンガで読んでみたかった気もする。

いないはずの彼女

複数視点がめまぐるしく入れ替わる実験文学風のスラップスティックホラー。漫画家でありながら、文章でしかできないことをちゃんとやっているところが素晴らしい。起きていることは恐ろしいのに、むしろ笑ってしまう文体だ。

同窓会の夜

いないはずの彼女に趣向は少し近いが、もっとホラーしている。ズレを生じながらも、次第に見えてくる真相を追っているうちに、まるで落とし穴のようなオチ飲み込まれてしまう。

蜘蛛の糸は必ず切れる

蜘蛛の糸」の諸星版。執拗なスプラッター描写は映像化不能かもしれない。あまりに残酷な一編。