ジャン・コクトー「恐るべき子供たち」

10年くらい前に読んだはずなんだけど、内容をあまりよく覚えていなかった。要するにそのときにはあまりインパクトを感じなかったのだと思う。もしかすると訳のせいだったかもしれない。

今回は光文社の古典新訳シリーズということで、読みやすくなった中条省平訳で読んだ。

ストーリーの過激さというのは、発表された当時ならともかくとして、今となってはそれほどインパクトがあるわけではない。そもそも途中から子供じゃなくなちゃうし。むしろ、そこに描き出される詩的イメージを読んでゆくべきだろう。著者ジャン・コクトーによる挿絵が、その心象風景をさらにもり立てるだろう。

そんな意味からも、途中までは性に合わないかなと思っていたんだけど、ラストのカタストロフの神曲天堂篇のような神々しさにクラクラとした。美しき燦めきと、その消滅を目撃せよ。