円城塔「Self-Reference ENGINE」

1月に新刊が出ると言うことで、ようやく読んだ。
いやあボルヘスですね。最高にボルヘスです。特に「A to Z Theory」あたりは特にそんな感じ。もうたまらない。

高等な思弁小説をやってのけたかと思いきや、次には落語とハードSFを組み合わせてみせる。そんな著者の超絶技巧にくらくらしながら読み進めることになるんだけれども、時間と空間をモザイクにした実験小説のような展開に恍惚すら覚えた。

本書はストーリーや登場人物のキャラを読んでゆくような小説ではない。ソフトウェアの処理を楽しむというよりは、アルゴリズムの動きそのものを味わうとでもたとえればよいだろうか。抽象的な「計算=動き」が組み合わさって世界をくみ上げてゆく、まさにアルス・コンビナトリアそのものなのだ。

お互いが微妙に関係している連作短編のような体裁をとっているものの、最終的に存在しない究極のコンピュータに結実してゆくに至って、長大な小説を読了したかのような余韻を味わえた。
無が世界を作り上げている……言うなれば本書は、イーガンの「順列都市」で展開された無限の世界が終わった後の話なのだ。