澁澤龍彦「世紀末画廊」

マニアックな幻想画家を一同に集めた澁澤龍彦ならではの美術論。
もちろん鉄板である幻想絵画の大御所もいるけれども、初めて聞くような名前も数多い。

澁澤流の、縦横な知識を駆使していながらも何にも縛られていない自由な批評は、読んでいて心地よい。古今東西、空間も時間もふきとばして、ほら面白いでしょ?と並べてみせられると、思わず感心してしまう。
アカデミズムとかはさておいて、こういう楽しみもあるのだ。
個人的にはアイロス・ツェトルの絵にもっとも衝撃をうけた。ただ巨大なカエルが二匹という絵で、理科的リアリズムであるのに、なぜだか幻想的。図鑑のグロテスクさと、不思議なポエジーが入り交じる絵だ。

ひとつ難点をあげるならマニアックな画家の名前や、絵のタイトルに原語が付されていないものが多いというところだろう。検索しようにもカタカナだけじゃ難しい。
アイロス・ツェトル、出てこないよ!
マニアックな人ほど、原典へのアクセスをきちんとしてほしいものだ。