ペトロニウス「サテュリコン」

放埒な古代ローマの世界へようこそ。
「色」欲と「食」欲、そして知「識」が同一空間で展開される作品。2000年前に、すでに人間の欲望がすべて描かれていたわけだ。
岩波文庫なのに、初っ端の一編からし児童ポルノ法にひっかかりそうな内容である。

読み所は酒池肉林のさまを描いた「トリマルキオンの饗宴」で、「豪華これ以上の単語が見当たらない程、豪華」な料理が次から次へと運ばれてくる。フェリーニの映画になったのも、まさにこのシーンだ。
哲学を披瀝したかと思えば豚一頭が、下ネタにはしったかと思えば鶏一羽が丸焼きになって運ばれてくるといった具合である。途中グロテスクな出し物もあったりと、完全にマルキ・ド・サドの世界だ。

古代ローマだけあって男娼や美少年にもことかかない。そんな世界のなかにおいても、ところどころで現れる詩の一編は神話的で美しい。

またセネカの「アポコロキュントシス」も併載されている。

余談

マルキ・ド・サドがらみでいうと実相寺昭雄による「悪徳の栄え」も、その豪華さには欠けるものの、サテュリコンの世界に近いといえるだろう。