エージェイ・アンジェエフスキ「とびはねて山を行く」

いつのまにやらあとで読むリストに入っていたもの。
現代ポーランドの作家で、先鋭的な作風で知られているらしい。しかし日本では、新しい世界の文学シリーズであるこの一冊を除いては翻訳されていないようだ。しかも本書も絶版である。

ジョイスを初めとしてポストモダンな文学的技法を数々用いており、読むのが非常にややこしい。ただストーリー自体は大したことはないので、むしろその背後にうごめく人間関係を追ってゆくのがよいと思われる。
また主題よりも、どうでもいい描写がとてつもなく面白い。鼻にできた腫れ物の膿を出すか出すまいかで悩むシーンなんかは爆笑モノである。

前半はほとんど改行のない「意識の流れ」的なかたちで書かれ、一体何を読んでいるのだか混乱させられる。
後半のパーティーシーンは打って変わって、普通の会話調。前半のアヴァンギャルドさに比べると後半はあまりに普通だな、と思って解説を読んだところ、原文では後半のシーンはラテン語、フランス語、英語等が入り乱れての会話になっているらしく、それをすべて日本語訳にしてしまったためにこうなってしまったようだ。

やはりこの手の小説を翻訳するのはそうとうに難しいということなのだろう。

余談

水着の女が寝椅子に身を投げて、エリアーデの「永劫回帰の神話」を面白そうに読んでいるシーンに萌え。
でもエリアーデがエリアードになっていて萎え。
これくらいはちゃんとしていて欲しいな、「永劫回帰の神話」ってタイトルが出てなかったらエリアーデだということに気づかなかったよ。