ロバート・J・ソウヤー「フラッシュフォワード」

やはりソウヤーはハズレが少ない。本書も大いに面白かった、何より題名がいい。
ある実験の失敗?により人類すべての人間が20年後の未来を数分垣間見てしまった、あるものは望まない未来を、あるものは自分が殺されることを知ってしまう。この状況で人類はどのような道を辿るのか?
クロバットな大ネタは少ないものの、小説の盛り上がりとしてはソウヤーの作品の中でも一番かもしれない。途中で読み進めるのがやめられなくなる。

冒頭に起きるフラッシュフォワード現象以外は、基本的に現代の科学レベルで書かれているので入り込みやすい。ただ所々で理論物理学用語が連打されるが、全然理解できなくてもストーリーの理解には問題はなく、SF初心者でも安心設計だ。
ただ未来に起きることがわかっているために、読んでるこっちが心配になるくらい大量の伏線が張られてゆく。ミステリで言えば不可能犯罪の連続殺人事件がこれでもかと起こるようなものである。それらがどのように収斂し、回収されてゆくのかを楽しんでいただきたい。(ただ本格ミステリほどにはフェアにカタルシスを得られるわけじゃないけど)

ラストにはチラッと壮大な未来ヴィジョンもあるので、ハードSFな人はそれを楽しみにすると良いだろう。

余談

240ページで触れられているフランク・ティプラーの「不死の物理学」というのがとても気になったのだが、どうやらティプラー著作はまったく翻訳されていないようだ。副題が「現代宇宙論、神と死者の復活」というのだからキてる。ISBN:0385467990
本書によると、このティプラーの理論とはオメガ点(時間の果て)では人間はすべて復活し、永遠に生きることになる、とのこと。その原理を要約すると、遠い未来に超進化したコンピュータが現在の物理現象をすべてシミュレートすることができるようになるため、だそうである。
ジョジョ第六部のプッチ神父スタンド能力メイド・イン・ヘブン」とか、グレッグ・イーガン順列都市」の塵理論みたいなものなのかな。

余談2

とにかく未来予測が小ネタ連打で面白い。
ちなみに2029年のマイクロソフトは2027年問題(32bitでの時間データの桁不足)で株価が急落し、会社更生法の申請を行っているそうですハイ。

余談3

ミチコとタミコという日本人が登場するんだけど、こういうのが外人がイメージする日本女性の名前なんでしょうか?