ザッヘル・マゾッホ「残酷な女たち」
いわゆるマゾヒズムの語源となったマゾッホの短編集。
どれを読んでも毛皮を着た強気っ娘が登場するので、そういうのが好きな人にはたまらないはず。逆に言うと、基本的に女性造形がワンパターンということでもある。
愛は平等ではない、鉄槌になるか鉄床になるかそのどちらかだ!という主張の元に、(比喩でなく)毛むくじゃらの熊を従えた女王様が高らかに自らの意志を主張し、一方、男は仕えるのが無上の喜びであることを確認する、というのがマゾッホの基本的パターンである。
内容はというと、表題作の「残酷な女たち」は長短編小説から抜き出された8つのエピソード。「風紀委員会」はマリア・テレジアが主人公で、風紀の取り締まりを上手く織り込んだ話。そして美女と野獣の題材を扱った「醜の美学」の3本。
他と比べてちょっと趣向が違うのが「醜の美学」で、これが一番面白いように思える。外見がいい男と、外見は酷いけど内面が素晴らしい男の対比とか、意地悪なストーリー展開が見事だ。
サド侯爵に比べるといまいちな知名度なような気がするけど、文学的にはマゾッホの方がしっかりしてる。なので変態性欲がどうのという文脈でなく、普通に読んでも問題なく楽しめる。はず。
とりあえず初心者はこっちから。基本です。
毛皮を着たヴィーナスposted with amazlet on 06.05.24
余談2
「醜の美学」の主人公のあだ名はムック。でもほとんどど使われない。