ドナルド・バーセルミ「死父」

アメリカ・ポストモダン文学の巨匠ドナルド・バーセルミの代表作。初めてバーセルミを読んだのだが、久しぶりの小説のリハビリにしてはきつかった。

生きているけど死んでいる死父と共に放浪するというような内容で、ストーリーは存在しないといってよい。意味不明なPVを延々と見せられている感じで、描かれる情景はとても心地よいのだが、雑然としているので組み合わせるのに大変な労力が必要になる。がんばれ読者諸君という感じだ!
といっても決して読みにくくはない。文章自体はとても平易なので、じっくり取り組むべき小説なのだろう。

はしばしに見られる文章はキリスト教ユダヤ教と深く関わっていると思わせるものが多い。そういう文化に慣れ親しんでいる人間なら、もっと深く読み進めることができるんじゃないだろうか。

あとがきは柳瀬尚紀によるバーセルミとの架空対談。現代作家でボルヘス読まずに書いてるなんてdreckだよねー、みたいな話があって面白すぎる。本編の方がわけわからんという人でも、あとがきを読めば多少は納得できるかもしれない。

ポストモダン文学と奇書はちょっと違うような気がするけど、最近使ってなかったから、まいっか。