原研哉「デザインのデザイン」

原研哉×茂木健一郎「脳とデザイン」を聞いて、 Ex-formationや未知化などさまざまな概念に目から鱗だったので、これは著作を読まねばと思って手に取った。mp3の音源は以下のURLから
http://www.qualia-manifesto.com/kenmogi.html


とにかく凄い本だ。タイトルからして単なるデザインの本ではないところを臭わせている。要するに概念デザインの本であると説明しておくのが妥当だろうか。
なので話題は幅広い。ありきたりのもののデザインを再検討するリ・デザイン。情報建築としてのデザイン。Emptiness:無のデザイン。愛知万博の初期構想について。そしてデザインの概念拡張……
また原研哉無印良品のアートディレクターとしても活躍しており、そのコンセプトデザインに関しても詳しく書かれている。無印好きの人は、その思考の深さに驚嘆するだろう。

デザインに興味がない人でも、デザインとはまるで畑違いの仕事をしている人にもヒントになることが数多く書かれている。それはマーケティングであったり、認識論であったり、自然との対話であったり、そういった抽象デザインを提案する本なのでもある。

具体的なデザインに関することでは、特にブックデザイン、紙メディアに関する記述が面白い。電子メディアのますますの台頭により、我々は紙メディアの紙性をいよいよ意識することになった/なるだろうという指摘である。そして書籍を「紙の彫刻」と呼ぶ。確かに紙の彫刻たらんとしない、ただの印刷物に未来はないだろう。
本書では指摘されていないが、音楽にしても同様だ。iTunesが普及するにつれて、CDは物質としての芸術性を問われるようになる。そういう意味では、これからは物質でしか伝えられない情報がより磨かれてゆく時代になるのかもしれない。
情報化の進む中で、そんな反時代的な楽しみと可能性を垣間見させてくれる良書である。