蘭郁二郎「怪奇探偵小説名作選〈7〉蘭郁二郎集―魔像」

前半はエログロ、後半はとんでもSF、そしてどの作品でも変態が大活躍という蘭郁二郎の傑作選。
粗筋は下記のページを参照のこと。
taipeimonochrome ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂 » 怪奇探偵小説名作選〈7〉蘭郁二郎集―魔像 / 蘭 郁二郎

実はここでの力の入ったレビューを見て、これは読まねばと使命感が沸き立ってきたわけである。
早速、読んでみたわけだが、いやあコレ最強ですよ。

たとえば「足の裏」は、子供の頃にパンチラを目撃して以来、覗き魔になってしまった男が主人公。この男、銭湯を作るのだが、浴槽の底を覗けるような仕組みにして、毎日、女風呂を眺めている。そんなある日、足の裏を見ていたところ、ある犯罪方法を思いつく。それを実行しようと考えるのだが、わずか数ページでひよってしまい「俺には犯罪は向いてない、やっぱ覗いてる方がいいや」という、ある意味衝撃的なラスト。
なにー!と読んでいて思わず突っ込んでしまいたくなる。変態至上主義のめくるめくストーリが蘭郁二郎の持ち味だ。

中でも「夢鬼」の素晴らしさは群を抜いている。
主人公は黒吉という醜い顔のサーカス団員。マゾな彼と、サドな美少女との駆け引きが読み所である。
詳細な内容は上記のページに譲るとしよう。

主人公がサーカス団&「クロちゃん」と呼ばれているので、いやでも安田大サーカスを思い出してしまうこと必至。まあ女々しいところがあるので、悪くないか。
ちなみに私、こういう話に非常に弱くて、なぜだか涙がこみ上げてくる。「家畜人ヤプー」も泣けたし、「毛皮のヴィナス」も泣けた。感情移入しているわけでもないのに、泣ける。

昔の作品とはいえリーダビリティには優れているので、とにかく「夢鬼」だけでも読んでもらいたい。そしてクロちゃんの最期を是非その眼で確認していただきたい。