ジェイ・イングラム「脳のなかのワンダーランド」

今、一番ホットな分野といえば、やはり脳科学だろう。人間の脳はとにかく不思議だ。
本書はそんな不思議な現象を引き起こす脳について、身近な話題からまれな現象まで、数多くの事例を紹介している。目次は以下の通り。

  1. 灰白質
  2. 無視
  3. ホムンクルス
  4. 記憶

原題は"The Burning House"で「燃える家」。これだけ読んでもわけがわからない。
これは半側無視の患者に、二枚の家の絵を見せる実験からとられている。ふたつの家は同じ絵なのだが、片方は左側から炎が上がっている。半側無視患者は左側を無視するので、どちらも同じ絵であると証言する。しかし、「どちらかといえば、どちらに住みたいか?」と問うて無理矢理選ばせると、かなりの高確率で燃えていない家を選ぶのである。どうやら無意識的に絵を理解しているらしいのだ。

意識に立ち上らない脳の不思議。本書のテーマは、コーヒーカップをとるというような一見単純なことでも、実は非常に複雑な脳活動の積み重ねであるというということを示すことにある。我々が意識している部分というのは、脳活動のほんの表面にすぎないからだ。

ただし全体的に投げっぱなし感があるので、あわせて「脳のなかの幽霊」を読んでスッキリしましょう。
V・S・ラマチャンドラン「脳のなかの幽霊」 - モナドの方へ