竹本健治「虹の獄、桜の獄」

竹本健治・文、建石修志・画による大人のための暗黒童話。
小説とも画集とも言え、二人の見事なコラボレーション作品となっている。

物語には一貫するテーマがあるように思える。それは、見てはいけないもの、知ってはいけないこと、に対する恐怖と憧れだ。
主人公の子供たちは、みながそうであるように、禁忌にこそ惹かれてゆく。だがそれを見た瞬間、知りえた時に、子供時代は終わってしまう。暗黒童話の四文字は見事にそれを言い表しているだろう。

建石修志の絵も、精緻な立体物が平面的に構成されたトロンプルイユ(だまし絵)の技法が多用されている。だから、めくりたくなる。その向こうに隠されたものを見たくなる。もちろん絵なのだから、それはできない。
確かに物語は暗黒だが、そこに秘められた淡い憧憬の眼差しは、やはり子供時代に持ち得ていた大切な物を思い出させてくれる。

というわけで、どちらのファンにとっても満足できる出来になっていた。

ただ童話ということもあって、短く読みやすいので、うっかりしているとあっという間に読み終わってしまう。
まあ、そう、せかせかせずに、ゆっくりと読みましょう。
文と絵を時間をかけて精密に味わったほうがよい本だ。