ゴンブローヴィチ「バカカイ」

ゴンブローヴィッチだったりゴンブローヴィチだったりするゴンブロヴィッチの短編集。
「バカカイ」って何よ?と皆さん思うだろうが、例によって特に意味はなく。ゴンブロヴィッチの造語である。しかも「バカカイ」という短編があるわけでもない。あくまで短編集の題名である。

面白いのから、変わったのから、意味不明なものまでバリエーションに飛んでいる品揃えで、個人的には(というよりミステリが好きな人間としては)殺人事件を取り扱った「計画犯罪」が面白かった。

これはアンチ・ミステリならぬ逆ミステリ。はっきりとしたことは書いていないのだが、非常にアイロニーに満ちた心情から、自ら殺人を犯した証拠を捏造してしまう。思わず殊能将之の「黒い仏」を連想した。

もうひとつ気に入ったのが、トリを飾る「大宴会」。これはとある王国の宴会の混乱ぶりを描いた超スラップスティックな短編。どのへんか「超」かというと、ちょっと引用すればおわかりいただけるだろう。

超・密集集団を率い先陣に立ち、超・突撃する超・国王は夜の闇へと溶け込んでいった。

1946年にも、こんな超超とか言ってる人がいたんですな。(実際には訳語として日本語の「超」を上手く当てはめた訳者の手腕をたたえるべきか)


というわけで極めて普遍的で超・時代的なゴンブロヴィッチ。読みたいと思ったときが読み頃だ。