岡崎勝世「世界史とヨーロッパ」

id:virginiaさんに勧められて読んだ本。
いまいち歴史ものというのは苦手なのだが、数ページ読んだところで、この本が世界史の本ではなく「世界史」史の本であることに気づき、がぜん、面白く感じてきた。
なるほど、これは批評理論みたいなもんなんだ。

ボルヘス的に考えると、そもそも本当の歴史というのは記述不可能である。正確な今日の日記には、今日の日記を書いていることを書かなくてはならない。それと同じで、歴史の中には歴史史があり、その中には歴史史史があり、と無限に繰り込まれてしまうからだ。
その結果、あらゆる歴史には捨象されたものであり、なんらかフィルタされたものになってしまう。だから脱構築されちゃたり、ポストコロニアリズム的な立場から批判をされてしまったりする。

とはいえ昔はそんなことを考えなくて良かった。なんせ神様が世界を人間を歴史を創っているに決まってたからだ。世界史の基本的な流れは、神の必然性に基づいて組まれる意味のある普遍史から、だんだんとキリスト教から離れて世界を記述する世界史へとなってゆく。
その中からマルクス主義とか、アナール学派とか、世界システム論とかがでてくる。

歴史とはただの記録じゃなくて、捨象される以上、ひとつの読み、思想である。世界史をただトピックを記憶する暗記物でなく、メタ的な「世界史」史と見ることで、色んなものが見えてくる、ってこと。そう考えると、歴史教育とかも新しい眼で見れるかも。

余談

かのニュートンも聖書に従った普遍的歴史を記述しようとしていた。かれの計算によれば、2015年に人類の終末が訪れるそうである。エヴァかよ!