アヴラム・デイヴィッドスン「どんがらがん」

「だれが定義しても異色作家」アヴラム・デイヴィッドスンの短編集。
どんがらがんな夜 - モナドの方へでも書いたが、予想通り説明することが非常に難しい小説だ。というか説明しようとすると、とたんにつまらなくなってしまう。ストーリーも設定もデイヴィッドスンの手腕だからこそ、このへんてこさ奇想が活きてくるのだろう。なので粗筋を紹介したとしても、どってことない話、ということになってしまう。

代表作の「ゴーレム」なんかはその典型だ。粗筋は、自分をゴレームだと思っている男がとぼけた老夫婦のいいなりになる、というだけの話。それだけなのに実に巧みに設計されていて、デイヴィッドスンでしか味わえない雰囲気を醸し出している。
うーん、この面白さは、伝えにくいよ!
逆に言えば伝えにくいからこそ、デイヴィッドスンを偏愛する人がいるのだろう。

編者である殊能将之と共通するところといえば、「ゴーレム」や「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」で見られるような、衒学的でありながら通俗的な所か。高尚なのと低俗なのがまるで同列に扱われているところがステキ。

もうひとつ注目すべき所は超豪華翻訳陣。浅倉久志伊藤典夫中村融深町眞理子若島正。この手の翻訳家の上の方からごっそり持ってきたという感じ。
これくらい揃えとかないと訳せなかったってことなのか。

「Bumberboom」が「どんがらがん」なんだもんなあ。

「わざとわかりにくく書いてあるシリーズ」はちょっと面白い。他のシリーズも読んでみたいな。