ヤン・シュヴァンクマイエル「GAUDIA」

ヤン・シュヴァンクマイエルによる絵画、オブジェ、スケッチ、コラージュの作品集。

触覚というモダリティへのこだわりと愛が随所に感じられる一冊。視覚を触覚に結びつける、共感覚シュヴァンクマイエルのキーワードのひとつだ。すぐれた芸術というのは、やはりどこか共感覚的なのだ。

シュヴァンクマイエルといえばアルチンボルデスク*1な造形が多い。それらの造形が知的遊戯だけにとどまることなく、原始的な快楽を引き起こすはなぜだろうか?
フーコーの「言葉と物」を引くまでもなく、魔術とは類似を、科学は差異を問題にする。アルチンボルドはその類似性を巧みに利用して、あのグロテスクな絵画を描いた。まさに魔術的芸術(アンドレ・ブルトン)と呼ぶにふさわしい。

そのそも触覚自体がハッキリと白黒をつけがたいアナロジカルな感覚だ。生物が初めて持ち得た感覚である触覚が、他のモダリティに比べて類似律に則った魔術的なものであること、そして忘れてしまいがちな触覚という感覚が非常に強烈であるということをシュヴァンクマイエルは思い起こさせてくれる。

砂遊びに明け暮れ、がらくたを蒐集した少年少女時代に、あの博物学的な時代に、もう一度立ち返ってシュヴァンクマイエルを楽しもう。

ファン必携の2冊

*1:アルチンボルド的なという意味。ただ使ってみたかっただけ。