ダニエル・デフォー「モル・フランダーズ」

ロビンソン・クルーソー」で有名なデフォーのもうひとつの代表作。実は「ロビンソン・クルーソー」読んでないんです、ごめんなさい。でも「疫病流行記」は読みました。マニアックな方から攻めるタイプ。

ストーリーはというと……原題を見てもらえればわかるだだろう。
原題は、「有名なモル・フランダーズの幸運と不運その他のこと。彼女はニューゲート牢で生まれ、子供時代を除く六十年の絶え間ない波乱の生涯において、十二年間情婦、五回人妻(そのうち一回は彼女自身の弟の妻)、十二年間泥棒、八年間ヴァージニアへの流刑囚、最後に裕福になり、正直に暮らし、悔悟者となって亡くなった。彼女自身が覚え書きから書いたもの」
激長!
とまあ、火曜サスペンス劇場の副題並みのわかりやすさ。正直もう読まなくてもいいんじゃないかっていうくらい。

モル・フランダーズという実在の人物が書いた自伝をデフォーが手直しして出版したという設定になっているが、もちろんそんな奴ァいねえ、デフォーの創作である。新聞が出来たばかりで、ニュースとノベルの違いがハッキリしてなかった時代、ロビンソン・クルーソーでもデフォーはこの戦法をとっている。同時代のスウィフトも「ガリヴァー旅行記」で同じことをやっていたはずだ。
もちろん本書のような人生なんていくら何でもありえない。もの珍しくて刺激的な物語なら売れる!と思ったデフォーは、おそらく断片的な事実をコラージュしてモル・フランダーズの人生を作ったのだろう。職業を転々としながら、ジャーナリストをしていたデフォーならではだ。
そんなデフォーの特長は、原題にも見られるように数字の細かさだ。とにかく数字にこだわるデフォー。具体的な数字を出すことでリアリティーを出そうとしているわけだ。

さて、モル・フランダーズだが、いわゆるピカレスク小説のハシリとされている。彼女の一人称で綴られているため、生きるために悪いことしてますよ、というのがヒシヒシと伝わってくるのだが、客観的に見たらとんでもない悪女だ。
愛がどうのこうの言っても、結局はマネーなのよ。金がなければ不幸になるから、とにかく金のある男をつかまえる!そんなバリバリ資本主義なモルたん、目が$$になりつつも、隙のないべしゃりで何度もゴールインするのだが、なぜだかどんどん不幸になっていっちゃう。でもタイトルにもある通り最後は悔い改めて幸せになるのでございます。

でも良く読むと、なんだかんだ金って気もするラストになっている。農業がうまくいって金があるから幸せなのだ。

さて、金をとるべきか愛をとるべきか。主人公の名前モル(MOLL)は、Money Or Love Lifeってことなんだ、きっと。

今読み返して気づいたが、あんまりにもフランクすぎるエントリーだ……_| ̄|○