イタロ・カルヴィーノ「不在の騎士」
最近何か物足りないと思っていたら、気づけば奇書エントリーが一ヶ月もないじゃありませんか!一応、奇書サイトを目指していたのに……
というわけで、変わった本といったらこの人、カルヴィーノ。ウリポにも参加し、言語遊戯的作品も数多く書いているが、本書はどちらかといえば幻想文学に属する作品である。
なんといっても登場人物が変わっている。
主人公は存在してないのに存在してると思いこんでる鎧だけの騎士。その名をセリンピア・チテリオーレならびにフェースの騎士、アジルールフォ・エーモ・ベルトランディーノ・デイ・グィルディヴェルニ・エ・デッリ・アルトリ・ディ・コルベントラス・エ・スーラ。長すぎ。
そして盾持ちの従者は、存在してるのに存在してないと思いこんでいる、主体性のない道化的な男なのだ。
基本的なスジは、いわゆる騎士物語をなぞっているものの、そこかしこにパロディめいたポストモダン的な手法がまぶされている。最終的にメタフィクショナルな落ちに持って行き、読者を驚かせたりするのもニヤリとさせられるところだ。それでいてポストモダン小説特有の読みづらさを感じさせないのだから巧い。
やたら強い女騎士など、しっかり萌えキャラも出てくるので、カルヴィーノの入門としてもオススメだ。(実際、自分もこの作品からカルヴィーノにどっぷり漬かりました)
まだ絶版なのか……
われわれの祖先三部作
「不在の騎士」は「われわれの祖先三部作」のひとつである。
他には、子供の頃に木に登ったまま死ぬまで地面に降りなかった「木のぼり男爵」。戦場で砲弾を真正面から受け、体がまっぷたつに分かれてしまった「まっぷたつの子爵」がある。
エスカルゴなんて大嫌い。
子供向けっぽいけど、かなり黒い。