映画

セルゲイ・パラジャーノフ「ざくろの色」

18世紀アルメニアの詩人、サヤト・ノヴァの生涯にオマージュを捧げた映像詩。 生涯というか、ある種のイニシエーションの段階のような章立てで進む。物語も映像も象徴的であり、明確なストーリーは語られない。そこはかとなく読み解くことは可能だが、その真…

クリストファー・ノーラン「ダークナイト」

悪い評判を一切聞かない珍しい映画。所詮勧善懲悪のアクション映画だろ?と斜に構えて見に行ったんだけれども、予想を上回る傑作だった。メメントの監督だし外れることはないだろうとは思ってはいたけど、脚本・演出ともにここまで作り込まれているとは!個…

押井守「スカイクロラ」

若者を対象にしているということで、中高生の気持ちで見た。ちなみに原作は読んでいないし、できるだけ予備知識なしで挑んだ。決して視線を交わそうとしない、人形のような登場人物。そして人間関係の気持ち悪いこと悪いこと。キャラデザの不気味さもあいま…

押井守「攻殻機動隊2.0」

見る前の事前情報として、なんでこれを変えるんだろうと思っていたところがあって、気に食わんなあと思っていたのだけど、見事にそれをひっくり返された。押井守なめてました。ごめんなさい。リメイクと言うよりは新たな解釈になっていて、無印と2.0が対とな…

フランク・ダラボン「ミスト」

方々の噂に乗せられて見て参りました。いやあ、酷い映画だった。良い意味で。どこからがネタバレになるのかわからないが、思いつくままに書いてみたい。 この映画は、濃霧の中に何かがいる!という未知なるものへの恐怖と、人間の心の中に潜む不気味なるもの…

ジェシカ・ユー「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」

アウトサイダーアート界でも、もっとも有名でもっとも謎に満ちたヘンリー・ダーガーのドキュメント映画。 彼が数十年にわたって人知れず記された超大作絵巻「非現実の王国」と、晩年にものされた自伝、そしてダーガーを知る者たちのインタビューとが渾然一体…

「クローバーフィールド」

いやー面白かった。 ネタバレがアレな映画ではあるんだけど、それなりにこの映画に興味があって、このネタに気づかない人はいないだろう。子供の頃から特撮とアニメですり込まれた日本人がピンとこないなんて有り得ないと思われる。 マンハッタンの夜にズン…

「バンテージポイント」

ひとつのシーンを別視点から何度もリピートするという構造に惹かれて鑑賞した。 脚本は巧みに作られていて、ほとんど完璧と言っても良いだろう。息もつかせぬ90分だ。 あえて文句をつけるなら、綾辻行人のミステリのような「こいつが犯人か?と思わせといて…

庵野秀明「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」

まず始めに言っておくと、良くできた総集編というのが正直な感想だ。 エヴァといえばそのTVシリーズのクオリティの高さ故、ビデオに録っておいて少なくとも3回は見るというのが当時のファンの行動だっただろう。だからカットや演出など事細かに覚えている…

デヴィッド・フィンチャー「ZODIAC」

実際におきた連続殺人事件であるゾディアック事件を題材にした映画。 ゾディアック事件といえば通り魔的殺人、警察をあざ笑うかのような挑戦的な犯行声明文、そして新聞社に送りつけられてくる暗号文と、まさに事実は小説よりも奇なりという事件である。犯人…

エリック・スティール「ブリッジ」

映画の中では正義のヒーローの銃撃によって悪漢達がゴミのように死んでゆく。あるいは主人公の友人や仲間達が感動的な死をとげる。もちろん虚構の出来事である。 だかこの映画は違う。この映画は本当に人が死ぬ映画だ。ゴールデン・ゲート・ブリッジ、その美…

池田敏春「ハサミ男」

殊能センセーのファンとしては見なければいけないとは思ってたんだけど、いまいち良い評判を聞かなかったのでずるずると先延ばしにしていた一本。見たら、案外、良かった。 原作を読んだのは発売当初なので細かいプロットの差異はわからなかったが大筋は同じ…

黒沢清「ドッペルゲンガー」

『回路』の黒沢清が監督、役所広司が一人二役に挑戦した異色作。偶然にも大ヒット商品を開発し、次の商品にも多大な期待が寄せられているエリート研究者・早崎。そんなある日、早崎の分身(=ドッペルゲンガー)が突如現れ、欲望そのままに暴走し出し…。 ホラ…

「ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦」

奇才、ラース・フォン・トリアーとドキュメンタリー映画の名匠ヨルゲン・レスがガチンコ映画バトル。 ヨルゲン・レスの短編「パーフェクト・マン」をセルフリメイクする過程のドキュメンタリーになっていて、リメイクするさいの条件をラース・フォン・トリア…

黒沢清「叫」

黒沢清初の本格ミステリーとかキャッチコピーがついてるけど、バリバリのホラー。ホラー苦手な人がコピーを信じて見ると、死ぬほど怖い目に遭わされる。 いわゆる黒沢清お得意の観念的なホラーというやつで、具体的な殺人事件が起こり、それに主人公が否応な…

今敏「パプリカ」

一言でいうと、デブでノロマでも、天才なら大丈夫という話。ちがうか。夢に潜り込む装置が盗まれて、悪用されるというストーリー。どんどんと欲望がむき出しになってゆくところが見所か。 夢の扱いは、フロイトとユングを足したような感じ。抑圧された無意識…

ルシール・アザリロヴィック「エコール」

カルト少女映画。いやー、これは困る。 臆面もなくビアンカ萌え〜とか言える映画だったら気楽なんだけど、快楽的に味わうには負の部分が多すぎるので、単なるロリ好きに荷が重い。逆に、そっちに興味ない人はロリロリしやがってプンスカ!となってしまうかも…

ヤン・シュヴァンクマイエル「ルナシー」

端的に言うと、精神病に悩む男がサド侯爵めいた男にたぶらかされつつ解法療法を受けるという話。 これまでのシュヴァンクマイエル映画の中では、台詞も多く、筋やメッセージもハッキリしててわかりやすい方だろう。解放された精神病棟という設定からしてドグ…

クシシュトフ・キエシロフスキー「ふたりのベロニカ」

ポーランドとフランスで、同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれたふたりの少女。どちらもベロニカという名前で同じ姿形をしており、音楽の才能があった。そして先天的に心臓を患っているのも一緒。お互いの存在は知らなかったが、どこかでもうひとりの自分を感…

園子温「紀子の食卓」

「自殺サークル」の続編、解決編である。「自殺サークル」ではそのメッセージ性よりも、デッドコースターばりのグロテスク描写ばかりが印象に残っていたので、また酷い気分になるんだろうなあと、ある種の期待と覚悟をして鑑賞したのだが、良い意味で期待を…

細田守「時をかける少女」

正直、ちょっと泣いた。 いつも奇書なエントリーをしまくっているひねくれものでも楽しめる、素晴らしい映画。手放しで賞賛している人々の声は嘘ではなかった。 というより、これを無理矢理でもけなすならば、とても良心が痛むだろう。そういう、すがすがし…

パゾリーニ「アポロンの地獄」

オイディプス王の映画化である。モロッコの乾いた大地のロケーションが美しい。 ラストでいきなり現代になったりとか、奇抜な演出も見所だ。 わりと原作に忠実なため、かえって説明が省かれていたりしている。なのであらかじめ原作を読んでおいた方が理解が…

「華氏451」「欲望」

最近、昼休みに実家から適当に持ってきたビデオを分割で見ることにしている。三日くらいで一本という勘定。 トリュフォー「華氏451」とペドロ・ラザガ「欲望」を見た。昔の映画って面白いね。ちなみにペドロ・ラザガの「欲望」(原題:EL LADRIDO)は劇場未…

マルホランド・ドライブとシムーン

マルホランド・ドライブとシムーンがかぶってる。色々な意味で……ちなみにマルホランド・ドライブを映画館で見たとき、即座に「N・Aの扉」を連想した。読解の助けになるんじゃないかと思うので、参考あれ。 マルホランド・ドライブposted with amazlet on 06.…

ミヒャエル・ハネケ「隠された記憶」

送りつけられてきたのは、家の前を録画したビデオだった。 インテリなTVキャスター一家がストーカーに狙われている。ビデオだけでなく、不気味な絵が家や会社に送りつけられてくる。それは主人公の過去に関わりがあるものだった…… 果たして犯人の正体にた…

GW映画三昧

というわけで予告通りDVDを見まくってました。 これまでも変な映画を見たけど、黒沢清の「ドレミファ娘の血は騒ぐ」の衝撃は凄かった。 「モーターサイクル・ダイアリーズ」モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版posted with amazlet on 06.05.07アミューズ…

ラース・フォン・トリアー「マンダレイ」

家の中が丸見え、床に描かれた白線が壁を表し、すべてが見通せる劇場のような舞台セットで衝撃を与えたドッグヴィル。その続編がマンダレイである。 →manderlay水漏れ修理ドッグヴィルの手法はしっかりと受け継ぎながらも、主人公のグレースはニコール・キッ…

黒沢清「LOFT」

高崎映画祭にて黒沢清の最新作「LOFT」を鑑賞。 なんと日本初公開であり、海外の映画祭などでもほとんど上映していないので、実質初お披露目とのことである。LOFTのテーマのひとつはトップランナーで語っていたミイラである。沼から発見されたミイラ、スラン…

塚本晋也「HAZE」

高崎映画祭にて塚本晋也の「HAZE」を鑑賞。 塚本晋也には、中学の頃に「鉄男」「鉄男2」を見て以来、計り知れない影響を受けている。男が目を覚ますと、そこは身動きすらできないコンクリートの密室。というシチュエーションで、カフカの「流刑地にて」の拷…

「ホテル・ルワンダ」

ルワンダで起きたジェノサイド事件をテーマにした映画。 思ったより金がかかっていてエキストラも多い。そのほとんどが難民と死体である。ルワンダのジェノサイドでは100万を超える人々が虐殺された。いくら大がかりの映画でも100万人の死は扱えない。そこで…